プロジェクト&プログラム・アナリシス研究部会(2022年7月8日)開催のお知らせ

プロジェクト&プログラム・アナリシス研究部会 (2022年7月8日)開催のお知らせ

2022年5月24日
研究部会主査: 日揮(株) 佐藤知一

各位:

「プロジェクト&プログラム・アナリシス研究部会」の2022年第3回会合を開催いたします。

皆さんはLiquidated Damages(略称LD)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。英語のdamageはダメージ・損害のことですが、damagesと複数形になると、法律用語で「損害賠償」のことになります。Liquidateは精算する・金額を決める、の意味ですから、合わせると「(契約違反時の)予定損害賠償額」になります。

どんな契約違反かって? 普通は、プロジェクト契約における、納期遅延の事を指します。つまり、「プロジェクトが完成納期に遅れた際に課せられる、契約上のペナルティ金額」で、海外とのビジネスを行う業界では、よく『リキダメ』などとも略します。一括請負契約はこのLD条項が含まれるのが通例ですが、実費償還契約(日本のIT業界でいう「準委任契約」に近い)でも、遅延ペナルティがつくことがあります。

プロジェクトを発注する側から見ると、これは遅延のリスクを受注者に転嫁する手段の一つです。LD条項をつけているのだから、受注者はそのつもりで、ちゃんとプロジェクト・マネジメントをしてくれ、ということでもあります。しかし、そうは言ってもプロジェクトは水もの。思いもよらぬ環境変化やトラブル発生のため、納期遅延は現実には珍しくありません。

しかもプロジェクトとは、発注者と受注者の共同作業でもあります。追加変更だってしばしば生じます。遂行途上で、互いにいろいろな判断や合意事項を積み重ねて、進む訳です。クリティカル・パス上に、受注側のアクティビティと、発注側のアクティビティとが並ぶことも、十分あり得ます。しかし、最終的に納期が遅れたら、その責任が相手にあり、自分にはないことを、契約交渉の上で示さなければなりません。

建設・エンジ業界では、受注者のことを、よくコントラクターContractorと呼びます。契約(contract)でビジネスを得て成り立つ業態だからかもしれません。下請けはSub-contractor=略してサブコンです。

受注型プロジェクトをなりわいとしているコントラクター型企業にとって、納期遅れの原因分析は極めて重要です。LD条項の額は契約金額に比例することが多く、大規模プロジェクトの場合、へたをすれば受注企業の年間営業利益が全部吹き飛ぶ可能性さえ出てきます。工程遅延分析(Delay Analysis)が重要になる所以です。・・ですが、例によって、この種の国際的ビジネス上の実務手法に関する情報がいたって乏しいのが、わたし達の住む日本という島国であります。

今回は、この分野の第一人者である大野紳吾様に、工程遅延分析に関する解説をしていただきます。大野様は一級建築士ですが、世界最大の建設・エンジ企業である米ベクテル社で、多くの海外プロジェクトの実務に従事された後、英システックインターナショナルにて法務紛争解決のコンサルティングに従事されています。世界レベルの最新の実務情報に触れる機会です。大野様には以前にも、カタールの新国際空港プロジェクトの驚くべき実態について、非常に興味深いご講演をいただいています。

なお今回は、リアル会合+オンラインのハイブリッド形式で行います。2年ぶりに、互いに顔を合わせられる機会ともなります。会議室の制約上、人数の上限はありますが、ぜひ積極的にご参加ください。

<記>

■日時:2022年7月8日(金) 18:30~20:00 (リアル会合+オンラインのハイブリッド形式)

■場所:京都大学 東京オフィス 大会議室A・B

https://rsv.adm.kyoto-u.ac.jp/entry/

(新丸ビルの10階です)

■講演タイトル:

工程遅延分析( Delay Analysis )~ 実務上のポイント ~

■概要:

昨今、コロナ禍やウクライナ侵攻など想定外の事象により、大幅に工程が遅れる建設プロジェクトが少なくありません。発注者は、コントラクター責ではない事象の発生に理解をするものの、果たして遅延がそのような想定外事象に直接起因するのか、コントラクター責の遅れもあるのではないかという疑問から、コントラクターに遅延の立証を求めるケースが増えてきています。

このような遅延の立証に使われる遅延分析(Delay Analysis)は、欧米を中心に技術としてすでに確立していますが、日本ではまだ普及していないのが現状です。本講演では、遅延分析の基本的な考え方や主な手法、よくある問題点など、事例を交えながら解説します。

■講師:大野 紳吾 様

所属:Systech International – マネジングコンサルタント

■講師略歴:

大学卒業後、日系ゼネコンにて国内の建築施工管理業務に従事。その後、米系建設会社のベクテル社に移り、海外大型建設プロジェクトのプロジェクトマネジャーとして、入札・設計・調達・工事監理・紛争解決などを経験。

現在、システックインターナショナルで建設プロジェクトの契約管理、スケジュール管理、クレーム管理、遅延分析、紛争解決を中心としたコンサルティング業務に従事している。

英国仲裁人協会会員、一級建築士、一級建築施工管理技士

■参加希望者は、リアル参加かオンラインかの希望をつけて、三好副幹事までご連絡ください。オンライン参加の方には、後ほど会議のリンクをお送りいたします。

■参加費用:無料。

ちなみに本研究部会員がスケジューリング学会に新たに参加される場合、学会の入会金(¥2,000)は免除されます。