年頭のご挨拶
19990101
年頭のご挨拶

スケジューリング学会会長   黒田 充(青山学院大学)


会員の皆様方にはつつがなく新年をお迎えになられましたよし、心から御祝い申し上げます。本年もよろしくお願い致します。
早いもので私達の学会は設立後もう10ヶ月が経過しようとしております。この間、多くの会員のご尽力により、ニュースレターの発行ならびにシンポジウムの開催が行われました。また、春にはホームページの設置が予定されており、現在その準備が進められております。さらに、新年度にはいくつかの研究部会をスタートして、会員が学会に直接参加できる機会を増やすようにしたいと考えております。
旧年来、新聞やテレビの報道は暗いものばかりという印象が続きましたが、その中でお正月のユーロランド誕生の報道はひと際明るい話題を提供してくれました。通貨の統合という欧州の人々にとっての長年の夢がいよいよ実現し、欧州に持続的な経済成長、雇用促進、通貨の安定などをもたらす基盤が作られるということです。この人間の叡智に基づく壮大な試みには、東洋の国に住む私達をも鼓舞するものが多くあることを感じます。
経済発展という共通の価値を求めて歴史や文化の異なる国家や様々の組織がいままでそれらを隔ててきた垣根を取り払い、連携し、協調するという姿から、未来における社会のあり方を想起する人はおそらく少なくないと思います。そこには、より大きな価値のためにいままで馴染んできた慣習や大切にしてきた価値を捨てるという理性の存在を意識します。
最近、産業界で注目を集め、私達、スケジューリングの専門家にとって研究の重要な背景とともに問題を提供しているサプライチェーンマネジメント(SCM)にもいま述べた新しい価値観が読み取れるように思います。情報技術の進歩がSCMを支えていると理解されることが多いようですが、その根底にはプロセス全体の効率と顧客満足を追求するために異なった組織が連携するという方法論が存在しています。この連携は、通常、アライアンスと呼ばれ、ユーロランドのものと比べると互恵の精神がより強いようですが、このアライアンスを実現するには、通常、知恵と努力が必要ですから、両者には相通じるところが少なくありません。この二つの例からも明らかなように、社会の効率を追求する方法論が情報技術の進歩に後押しされながら発展しつつあると言えます。これは、経済だけではなく環境問題やエネルギー問題に対しても有効に活用できる普遍性を持っていると思われ、希望を抱かせてくれます。
さて、スケジューリング学会もいくつかの学会による連携に基づいて作られた、かつて存在したことのない新しい組織であると言えなくはありません。私達にとっての共通の価値はスケジューリングという学術領域におけるスピーディで密度が高い情報交換の場を持つこと、また同じ興味や関心を抱く同好の士が集うことそのものにあると言えましょう。今年も引き続き、会員諸姉諸兄とともにこれらの価値を大切に守り、さらにより高い価値を求めて行きたいと存じます。どうかご協力お願い致します。