2000年 01月 01日 |
年頭のご挨拶
スケジューリング学会会長 黒田 充(青山学院大学)
会員の皆様方には輝かしい新春をお迎えのことと、心からお慶び申し上げます。本年も何卒よろしくお願い致します。
同じ新年でもミレ二アム(千年紀)最初の年ともなると、とりわけ新鮮ですこし改まった気持ちになるのは私だけではないと存じます。なんとなく、新しい時代、おそらくは人や自然を大切にし、あらゆるものとの共生を旨とする社会の到来が予感されます。先日、訳があって出席した会合で、ある県の知事が地方自治体の行政は情報公開を基礎に置いた生活者起点のパブリックマネジメントに変容しつつあるということを熱っぽく語ってくれましたし、予備校から送られてきた文書には、長い間にわたって大学の選択尺度として用いられてきた偏差値がその役割を終え、それに替わり学部・学科の特徴や教授の研究業績が尺度になりつつあることが述べてあります。身近なところでは、就職活動に臨む多くの学生が従来のブランド指向を捨て新しい価値観で就職先を選ぼうとしています。
これは世界中で同時に進行している改革の嵐が、ちょうどいま日本に津波のような大波になって押し寄せていると言えるのではないでしょうか。私達の研究対象であるスケジューリングも例外ではなさそうです。APSがその代表であり、新しいロジックが伝統的なスケジューリングやMRPのロジックを置き換えようとしています。顧客のオーダに基づいてスケジューリングと資材の手配を同期的に行うというAPSの考え方は、顧客満足を実現するだけでなく、資源を有効に活用し、キャシュフローを最大化するという製造業の経営目標に合致するものです。
APSの基本ロジックはすでに確立されており、それを用いるソフトがやがてAPS市場を席巻するだろうという観測すらする人がいます。しかし、生産工程の複雑さや日本の製造業の特徴を考えると、話はそれほど簡単ではなく、むしろ、APSソフトの開発・販売のビジネスチャンスはこれから始まるという見方ができます。まして、研究者にはこの新しいスケジューリングの環境が新鮮な研究課題をもたらすことは明らかであります。
近年におけるスケジューリング技術の発展の足跡をたどると、改めて現実の問題を直視し、論理に忠実であることの必要性を痛感します。また、このような姿勢から創造的な成果が生み出されることに疑いはないという気がします。本学会が誇るべき資産は正に醸成されつつあるこの研究姿勢でありましょう。2000年を迎えるに当たり、学会員や関係者がスケジューリングの領域で数多くの創造的な仕事を成し遂げられることを祈ります。さらに、研究成果が海外に紹介され、本学会がスケジューリングの専門家集団として世界で広く知られるという夢を会員諸姉諸兄と共に抱こうではありませんか。そして、遠からずその実現を祝って酒杯を高々と掲げようではありませんか。 |
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