2002年 02月 01日 |
年頭のご挨拶
スケジューリング学会会長 木瀬 洋
最初からはなはだ悲観的な言を弄して恐縮ですが、新世紀に入って1年経過した現在、我が国を含めて世界の情勢は混沌としてきているように見えます。愚考しますに、この原因の一つにいわゆるグローバリゼーションが深く関わっているように思えます。グローバリゼーションは、情報技術の飛躍的発展により誰もが欲しい情報を容易に得ることが可能になり、それによって國内外において公平な市場が確立されることを意図していると思われますが、現実はなお情報偏在下でのグローバルコンペティション(言いかえると弱肉強食)とほぼ同義語となって、これがむしろ富の偏在をますます加速させ、混乱の原因の一つではないかと思われます。他方、正常なグローバリゼーションになったとしても、これによる市場や経済の拡大がより深刻な環境破壊を招く危険があり、この矛盾を回避する方策が見いだされなければなりません。この意味で単に高度なだけでなくより思慮深い情報創生技術の確立と普及が急務ではないでしょうか。
さて、前置きが少し長くなりましたが、我が学会が対象としているスケジューリングも情報創生技術の一つである以上、たとえその効果が限られているとしても、上記の課題に決して無縁ではないはずです。したがって、高度な(広い意味での)最適化技術の開発がさらに進められることに加えて、それらを誰もが容易に取得し、利用できるための標準化技術の開発や環境の整備がより一層重要になると考えます。幸いにして我が国のスケジューリング技術は先進諸外国に勝るとも劣らずの段階にあり、また、近年、若い方々が上記の主張に沿うような先進的研究を行い、かつ、実績を上げられつつあることは誠に喜ばしく、かつ、心強いことであります。学会としてもこのような研究をより一層促進する方策を検討し、実施せねばならないと考えています。
他方、物づくりの場では、製品を効率的に生産する従来の方式から、リサイクルしやすい生産方式に今後、パラダイムシフトしていくと信じています。従ってこのような生産方式(確立されているとはまだ言えないかもしれませんが)に対する新たなスケジューリング最適化も今後の重要な課題の一つになっていくのではないかと考え、この方面の研究が萌芽することに期待しています。
最後に今年の学会の行事に触れ、会員諸姉諸兄のご注意を喚起させていただきます。
まず、6月に本邦初めてのスケジューリング国際シンポジウムが機械学会と共催で開催されます。組織委員会委員長は現副会長の藤本英雄先生、プログラム委員会委員長は元会長の黒田充先生、現地実行委員会委員長は理事の増山繁先生であり、組織的には本学会主催といえます。
10月にはスケジューリング・シンポジウム2002が実行委員長石井博昭先生のもと大阪大学で開催されます。丁度、学会設立5周年を迎える年ということで何か記念になる行事を実施したいと考えています。
また、本年は会長選挙の年でもあります。現会長としてやはり非力であったと痛感せざるを得ないのは残念ですが、次期会長にはより強力なリーダシップのある人が選ばれることに期待したいと思います。 |
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