スケジューリング学会 設立趣旨

社会はいまグローバリゼーションの真っ只中にあり、温暖化防止に代表される環境保全、 南北問題、経済システムの再構築など人類にとって避けて通れない地球的規模の課題に対する取り組みが始められている。

これらの課題の根底をなす問題として、社会全体でのエネルギー消費の削減、あらゆる資源の有効利用さらに共生を目指す価値体系の創出があげられよう。 スケジューリングは人間の活動や人工システムのオペレーションの実施順序や実施時期に関する計画の作成ならびに変化に応じた計画の修正を行うことであり、 社会や産業のいろいろな場面で必要とされるが、その良し悪しは消費エネルギー、資源の無駄遣い、活動の当事者あるいはサービスを受ける人々の満足の程度に著しく影響する。

スケジューリングに関する研究は長い歴史を持っているが、その成果が今まで人類の福祉の増進に大きく寄与したとは言い難い。 その主な理由として、方法・手法の未成熟、コンピュータやネットワークなどの計算・通信環境の不備、スケジューリングに関係する人々の意識の不足が挙げられよう。 しかし、近年におけるコンピュータやネットワークの低価格化と性能の向上と相まって、数理計画法、シミュレーション、人工知能、制約論理、メタヒューリスティックスなどのスケジューリングに役立つ手法ならびにそれらを利用したツールが作り出され、 現在では様々のスケジューリング問題の解決が可能になってきている。

新学会の設立はこのようなスケジューリングに関する技術上の進歩、社会における問題解決の増大する要請を背景とするとともに、 過去5年間にわたってスケジューリングの専門家によって開催されてきた「生産スケジューリング・シンポジウム」がもたらした成果を大きな要因として挙げる必要がある。 1993年開催の第1回シンポジウムを境目として、それまで異なった学会で活動してきた研究者・技術者がスケジューリングという共通のテーマの下で結ばれ、知識を共有し、 多様な経歴のメンバーからなる専門家集団が形成された。

新学会の設立目的は、生産スケジューリングに主として係わってきた今述べたところの研究者・技術者の輪を拡げて、 エンジニアリング、製造、輸送、ロジスティクス、看護、教育、その他のサービス、 さらにコンピュータ、通信などの様々の領域におけるスケジューリングを研究あるいはシステム化の対象とする専門家を含む大きな輪を作り、 各問題領域内の情報交換にとどまらず、異領域間での情報の交換を通じて、スケジューリングならびにその関連問題の新手法の開発と理論の拡充を推進することにある。 さらに、研究や開発の成果を整理・体系化し、将来における研究の発展と技術の進歩をもたらす環境を醸成に努めることを目的とする。 また、国内のみならず海外における当該分野の研究者・技術者と連携して、これらの目的を共に実現することも本学会の使命と考える。

具体的な学会の活動として、

  1. 定例シンポジウムの開催
  2. ネットワークを利用したニューズレターの配布
  3. 国際会議の開催
  4. 海外の研究者との共同による国際誌の刊行
  5. ハンドブック等の刊行物の出版
  6. 用語等の標準化
  7. 共同研究の実施

などが予定されている。

本学会は、産業界・学界の区別なく、民主的思考に基づき各世代の研究者・技術者が対等に交わり、 互いに研鑚し、成果を公表し、スケジューリングと関連問題に関する理論と技術の発展を通して、 共生を旨とする来るべき社会に精神的・物質的に貢献する創造的専門家集団であることを目指したい。